2014-08-03

ウォルト・ディズニーの約束

見逃していた映画「ウォルト・ディズニーの約束」を下高井戸シネマで観てきました。


メリー・ポピンズの映画化を巡った原作者のパメラ・トラヴァーズとウォルト・ディズニー、スタッフ達との裏話です。でもただの製作裏話ではありません。結構、壮絶!

メリー・ポピンズの映画化を避けたい頑固で気難しいトラヴァーズと、娘に映画化を約束したためどうにかして映画化したいディズニー。けどトラヴァーズが頑なにこの作品を守りたいのには大きな理由があったのです。

それは幼い頃の父親との思い出を込めた物語だったから。家族や父親との悲しい思い出。夢や空想の世界を大切にしたい思い。


トラヴァーズの父親は想像力豊かな人物でしたが、現実的な銀行員の仕事が合わずアルコール中毒に。母親も疲弊しボロボロになってしまった家庭に、叔母さんが薬をたくさん持って突然やってきます。彼女のおかげで生活が回り始めますが現実は厳しく、父親は亡くなってしまうの。


そもそもメリー・ポピンズにそんな背景があったこと、ほとんどみんな知らないのではないでしょうか。

メリー・ポピンズといえば、魔法が使える美人で知的なお手伝いさんがうちに来たら、お堅いパパもママも変わって家族がハッピーに!っていうおはなしだと思っていました。


でも原作者の考えるメリー・ポピンズはちょっと雰囲気がちがっていた。私はディズニーのメリー・ポピンズを子どもの頃何度も観たけど、原作も読んでおくべきだったと思いました。きっと原作を知っていたらディズニーの映画に少し違和感を感じていたかもしれません。だってトラヴァーズに言わせると、メリー・ポピンズは歌わないのだそう!


ところでなんで今、この映画がつくられたんでしょう。トラヴァーズもディズニーももうだいぶ前に亡くなっています。

メリー・ポピンズ映画化のきっかけとなったディズニーの娘はもう高齢で、この映画の公開直前に亡くなったそうです。また、映画製作にあたってトラヴァーズに死ぬほどダメ出しをくらったスタッフ達はこの映画を観て涙したんだって。彼らは彼女の背景を知らなかったんですね。関わった人たちが高齢になって、この記録を残しておくべきと感じたのかもしれません。


映画化を認められずイギリスに帰ってしまったトラヴァーズを、ディズニーは家まで追いかけ必死に説得します。メリー・ポピンズの物語で彼女がいちばん助けたかったのは、自分の父親と同じ銀行員のMR. BANKS(こどもたちのお父さん)だったこと、また父親との悲しい記憶をトラヴァーズがずっとひきずっていることを知り、ディズニーは自分の父親とのつらい記憶を明かしながら「もう悲しみを終わりにしよう」「あなたが嫌だと思う映画にはしない」と約束するの。トラヴァーズもこの出来事で「もういいわね」と降参することに。悲しみを終わらせたのね。


この映画、原題がSAVING MR. BANKSなんです。そのまんま。メリー・ポピンズはこどもたちを助けに来たのではなくて、MR. BANKS(お父さん)を救いに来たんですね。


そんなわけでメリー・ポピンズは歌やダンスのシーンも印象的だけど、実はお金についてのシーンも印象的です。銀行員が出てくる映画なんて珍しいよね。私も父が銀行員だからさらに印象に残ったのかも。劇中私がいちばん好きな曲は「2ペンスを鳩に」でした。とても素敵な曲で、大切につくられたシーンだったんだなと思います。

ディズニーやトラヴァーズの時代は、今のようにあっけらかんとみんなが夢の国を楽しむなんてできなかった時代だったのでしょう。日本も戦中戦後すぐの大人たちはそうだったようですしね。ディズニーはその悲しい時代を終わりにし、新しい時代に踏み出したひと。そんな時代の移り変わりを記録した映画でもあると思いました。

ところでディズニーがトラヴァーズにディズニーランドを案内するシーン、とっても羨ましい!これで彼女の心が開いたわけではなかったのだけど…。


最初ホテルに置いてあるミッキーのぬいぐるみに「そこで洗練について考えてなさい」と端に寄せてしまった彼女が、父親のことを思い出してそのミッキーを抱きしめて眠り、最後には映画公開レセプションでミッキーにエスコートされて歩いていきます。


やや唐突な展開も感じましたが、観た直後は少し切なく、その後は映画の価値をかみしめるような良い映画でした。トム・ハンクスも最高!メリー・ポピンズ、もう一度みよう。そして原作も読もう。



0 件のコメント:

コメントを投稿